漫画、小説、映画などの感想

漫画や小説など最近読んだ本、あるいは映像作品などの感想を書いております

少年SF短編 1巻 藤子・F・不二雄大全集

少年SF短編1巻の感想です。この巻に収録されているのは

  1. ポストの中の明日
  2. ひとりぼっちの宇宙戦争
  3. おれ、夕子
  4. 未来ドロボウ
  5. 流血鬼
  6. ふたりぼっち
  7. 宇宙船製造法
  8. 山寺グラフィティ
  9. 恋人製造法

それでは印象に残った作品をピックアップ

ポストの中の明日

主人公は部分的にですが、未来を見る能力に目覚めます。その能力は必ずしも主人公の生活に豊かなものをもたらすものではありませんでした。しかし、友人とハイキングに行き、遭難した際、未来の夕日を目撃します。そこから方向を割り出し無事生還するというストーリーです。

この話を大人になってから読んでファーストガンダムみたいだな、と思いました。ファーストガンダムの主人公アムロは、ニュータイプという超能力に近い才能に目覚めます。戦争には役立つ能力でしたが、人生に豊かなものをもたらすものではありませんでした。しかし、最終的にその能力で仲間たちを最終決戦の場から脱出させ、自身も生還します。

話の筋は近いものがあると思います。

ガンダムは1979年の作品ですので「ポストの中の明日」のほうが4年早く発表されています。ガンダムの富野監督がパクったとはさすがに言いませんが、40年近く続いているビッグコンテンツに先駆けて同レベルの発想をしている藤子・F・不二雄先生の才能は桁外れではないでしょうか。

宇宙船製造法

宇宙旅行に出かけた少年、少女が宇宙船の故障により文明のない星に不時着します。少年少女はその星で生活していくため右往左往します。

「ポストの中の明日」がガンダムならこちらは「無限のリヴァイアス」を思い出しました。無限のリヴァイアスは1999年の作品ですので、こちらは20年早く発表されています。

宇宙船製造法も無限のリヴァイアスも宇宙版十五少年漂流記といったコンセプトのもとに作られているのは 明白ですので、似てしまうのも仕方ないと思います。

特に相似な点は、最初に暴力でグループのイニシアティヴをとろうとする少年が現れるのですが、クーデターに会い、次にトップに立った少年が、その反動からか過剰なまでに秩序を守ることをグループに強要する点です。

無限のリヴァイアスの脚本家である黒田洋介氏はもしや、「宇宙船製造法」にインスパイアされてリヴァイアスを…ってこともなきにしもあらずではないでしょうか。

この作品、最大の見せ場は主人公が星を脱出するため、無理やり船を操縦するシーンです。船体の破損箇所を補完するため、船全体を流氷に沈めコーティングしようとしようと船を動かすのですが、リーダーの少年は賭けみたいなことは許せないと反対し、主人公に銃を向けます。

脱出のアイデアがまずすごいですし、主人公とリーダーの少年との緊迫感あふれるシーンは読み応えがあります。

山寺グラフィティ

死後婚という民俗風習を取り扱った伝奇SFです。「旅人還る」の計画名がフダラク(補陀落)計画であったりとか民俗学にも明るい藤子・F・不二雄先生ですが風習そのものを題材にした作品は記憶にありません。ミステリアスで情緒溢れる漫画だと思います。もっとこの手の作品を残して欲しかったですね。この本収録の「おれ、夕子」もですが、娘を失った父親の悲しみがおこさせる行動が切ないです。