マスカレード・イブ 感想
東野圭吾さんの書くマスカレード・ホテルの主人公、新田と山岸が出会う前の前日譚にあたる短編集です。4つの短編の感想を簡単にしていきます。ネタバレありなので未読の方は注意してください。
それぞれの仮面
ヒロイン山岸がコルテシア大阪に短期赴任します。そこで元プロ野球選手のマネージャーとなった元彼と再開します。
4つのエピソードの中では一番地味な印象を受けましたね。元彼の宮原は善良で不倫なんかしなそうな人物ですから、お相手は元プロ野球選手の愛人なんだろうなと当たりを付け読み進める人は多いと思います。
ルーキー登場
ある会社経営者がジョギング中に殺害されます。事件の黒幕は料理教室の講師をしている被害者の妻で、自分に気のある男を利用し旦那を殺すよう仕向けるんですね。仕向けるだけで、殺人教唆の証拠もなく罪にとえない。釈然としない後味の悪さでした。しかも実行犯の男とは別に、被害者の妻には本命の男がいますから。悪女っぷりが印象的でした。
仮面と覆面
売れっ子女子高生作家はじつは中年男性だったという秘密を隠し通すエピソード。
コメディタッチで面白かったです。この本で一番好きな短編です。ホテルに訪れる人たちは仮面をつけている、という作品にそった秀作だと思います。
マスカレード・イブ
表題作だけあって、一番読み応えがあります。これまでのエピソードは新田と山岸のどりらかが主人公で、一方しか登場しませんが、こちらは二人とも登場します。
新田とコンビを組む、応援に駆り出された穂積理沙が印象的でした。緊張感がなく的外れなことばっかり言う残念なコですが、がんばって聞き込みをして、その姿に心を動かされた山岸から助言を得てお手柄をあげます。よかったよかった。
事件のトリックは交換殺人なんで、カンのいい人なら早い段階で気づくと思います。
全体的にこの短編集は、たぶんトリックよりも登場人物を書きたかったんじゃないですかね。そんな印象を受けました。
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