漫画、小説、映画などの感想

漫画や小説など最近読んだ本、あるいは映像作品などの感想を書いております

兇人邸の殺人 感想

この作品をふくめ、シリーズ3作すべて読んでいますが、1番面白かったです。ぐいぐいと引き込まれて一気に読んでしまいました。
前2作のほうが話の出来はよかったような気がしますが、主人公たちのおかれている状況のヤバさとか、不木の研究の犠牲になった悲劇っぷりなど、読み応えがハンパなかったです。
この小説を楽しむのなら、館のマップを文章と照らし合わせながら、兇人邸の内部構造をある程度把握しておくことが大事ですね。なるべく早い段階に、大雑把でよいので、頭の中で見取り図を再現できるようにしておくのが望ましいでしょう。

  • 広間からしか地下(主区画、副区画)に行けない
  • 主区画は複雑なつくり
  • 副区画はシンプル
  • 主区画と副区画と別館(巨人の居住区)は首塚を経由しなければ行き来できない
  • 首塚は吹き抜けになっており、光を嫌う巨人は夜にならねば行き来できない

これさえ覚えておけば話は理解できると思います。
これらの情報は出そろった時点で、1度まとめて登場人物の誰かに語らせてほしかったですね。前2作では登場人物に関しては情報が出そろった段階で、名前と照らし合わせてくれましたが、今回はそういうのはなかったです。ああいった親切心が好きだったんですが、なくなってしまったのは残念です。

ここから先はネタバレありなんで未読の方は注意してください。

とても面白く読めた本作ですが、これはちょっとどうかな?という点もちらほら見受けられました。
たとえば、剛力京とケイは共通点が多く、同一人物であると予想して読み進める人が多いと思います。京はケイと読めますし、2人ともかに座であるとか、京はナルコレプシーでケイは居眠りばかりする点ですね。剛力京が不木を殺害したのも剛力京=ケイ説を後押しします。これは意図的に作者が仕掛けたミスリードなわけですが、共通点があまりにも多すぎます。さすがに星座やナレコレプシーはやりすぎかと思いますね。こんだけ共通点が多いのに別人って逆にすごいような…巨人の正体がケイだったとあきらかになったとき、読者に衝撃をあたえるためにミスリードを仕掛けたんでしょうけど、少々くどすぎます

だって私は蟹座だし。コウタは天秤座でしょ。私の方が生まれは早いじゃない。

こんなセリフが序盤にさらっとあって、後半に剛力京がかに座で剛力智がてんびん座という情報が提示されてたら
剛力京=ケイ
剛力智=コウタ
巨人=ジョウジ

って、読者は確信すると思うんですよね。この展開で同一人物でなければ、星座の情報っているんでしょうか?
たしかに巨人=ケイと知ったときの衝撃はすごいもんがあったんですが、星座に関してはちょっと行き過ぎたミスリードだと思います。

あと、比留子が逃げ込んだ部屋に巨人が入ってこないことについて、あまり言及されないことに違和感を感じました。終盤でなぜ巨人が近づかないのか明かされますが、巨人の居住区内で頑強な扉もない部屋にいるのですから、その状況の危うさはもっと作中で強調されてもよいように思います。

裏井が雑賀を殺害した動機についてもちょっと共感しづらいな、と思いましたね。とってつけたような感もありました。
たとえば、ケイが正気だったころに大事にしていたものを盗んだとか、そんなののほうがよかったんじゃないでしょうか?

イマイチに感じた部分を何点か書き連ねましたが、冒頭でもいったように、この作品めちゃくちゃ面白かったんですよ。だからこそ気になる点も出てくるわけです。このシリーズへの愛が語らせるわけです。良かった点なんてそれこそ枚挙に暇がないですから。
スキンヘッドだから隻腕では複数いっしょに運べないとか、再生能力をいかした血のトリックだとか、自身の口内に鍵を入れ巨人に運ばせるとか、よくこんなこと思いつくなと感動すら覚えましたからね。

余談ですが一作目の感想でアニメ向きといいましたが

nakanet.hatenablog.com

今作は残酷すぎて映像化しづらそうですね。