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悪意 東野圭吾 感想

加賀恭一郎シリーズの4作目です。シリーズ屈指の面白さでした。おおまかなあらすじはWikipediaによると

有名小説家の日高邦彦が自宅で他殺体となって発見された。刑事の加賀恭一郎は、日高の親友である児童小説家の野々口修が書いた「事件に関する手記」に興味を持つ。加賀は聞き込みや推理を通して、野々口の手記に疑問を抱くようになる。やがて犯人が明らかになるが、犯人は犯行の動機を決して語ろうとはしないのだった…。

ここから先はネタバレありになりますので未読の方は注意してください。

物語が大きく二転三転するのでインパクトがあり、読む手が止まらず、一気に読了しました。
野々口が日高のゴーストライターだったんだろうな、とは思いながら読んでいたのですが、それが野々口の仕組んだ罠であったと知ったときはゾっとするものがありました。日高の命を奪っただけでなく、最初の奥さんの名誉も傷つけ、生前の功績を全部奪うとか、もうどんだけ底知れない悪意なのかと。それをするため、めちゃくちゃ手の込んだことをしてるし。
野々口が日高に悪意を持つキッカケも、やけにリアルに感じました。もともとはしょーもない劣等感なんですよね。それが育っていって、決め手は過去の強姦事件の真相を日高に知られたこと。才能だけでなく人間性まで大きく劣るということが、彼に知られてしまった、とそういうことだと思います。映画アマデウスを思い出しますね。男の嫉妬は女のそれよりはるかに恐ろしいので、野々口の手のこんだやり口も説得力があります。推理、娯楽作品でありながら、タイトルである人間の「悪意」をうまいこと描いた作者の力量に脱帽です。