漫画、小説、映画などの感想

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22年目の告白 感想

前半部分は観ていてキツイもんがありました。時効になった絞殺事件の犯人・曾根崎が事件についての本を出版。曾根崎のキャッチーなキャラクターが世間にウケて各メディアに引っ張りダコ。この展開は流石にないな、と思いました。
事件の加害者側の人間の本を出したがるアホな出版社はいくらでもありますけど、テレビ局は最近やけに保守的だし、仮に放送してもそれを受ける大衆側の拒絶反応がスゴいことになるハズなんですよね。劇中のような世間をにぎわす大フィーバーになるとしたら、日本の倫理観は終わりじゃないですか。いくらフィクションとはいえ、どんだけ的外れに世間を描いているのかと思いました。はっきり言って前半部分は茶番もいいところです。


本を出版し、メディアにも露出したことにより、心に闇を持つ一部の人間からネット内でカリスマ的な支持を集める、ぐらいの描写でよかったのではないでしょうか。この程度の描写でも作劇できたハズです。

ここから先はネタバレになりますので、未見の方は注意してください。
真犯人と思われる黒マスクの男が登場し、曾根崎の正体がわかったあたりからは多少は面白くなってきました。結局、黒マスクも犯人ではありませんでしたが、そこから曽根崎が真犯人のジャーナリスト・仙堂に辿りつきます。
前半は22年前の事件で先輩を失った刑事・牧村が主人公っぽかったですが、後半は曾根崎が主人公っぽかったですね。
仙堂は仲村トオルが演じていますが、正義漢っぽいイメージがある俳優なのでサイコな役はミスキャットのように感じました。
犯人の動機ですが、ここだけよかった。推理ものは犯人の動機が、どうしても後付けになってしまいがちですが、なぜ大切な人の目の前で絞殺するのか、という点がうまいこと理由づけされていたと思います。同じ体験をした人間がこの世にいるのが救い。だから自分で生み出すためというサイコパスっぷり。
ここがよかっただけに曾根崎が真犯人の牧村にたどり着くまでの描写を丁寧に描いてほしかったですね。
前半は犯人の自己顕示欲を刺激し向こうからのアプローチを待つ、後半は仙堂の所作と言動に怪しさを感じた曾根崎が殺害方法から核心にたどり着く、ここのディティールをもっとうまいこと描けていたらよかったと思うんですよね。