漫画、小説、映画などの感想

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スウェーデン館の謎 有栖川有栖 感想

有栖川国名シリーズです。かなりの名作だと思いました。
まず舞台が会津磐梯のロッジっていうのがいいですね。自分が福島県民だからってのもありますが、静かな冬のロッジっていうのが、物悲しい殺人事件の舞台としてふさわしいと思います。
ストーリーの構成もいいですね。探偵役の火村は事件が起きてから、有栖に呼ばれるので、物語の途中からの登場となります。事件解決の突破口が見えず、行き詰まった閉鎖感の中での火村の登場はとても心強く感じました。京極夏彦の京極堂シリーズを思い出しました。あのシリーズは謎解き役の中禅寺の登場をめちゃくいちゃ引っ張りますからね。
登場人物もよかったです。童話作家の乙川リュウ、その妻ヴェロニカとそれぞれの親・育子とハンスは作者の中で人物の掘り下げをしっかりした上で描かれていると感じました。人物に血が通っているといいますか、キャラが立っているといいますか、そんな印象を受けます。切ない読後感に作品を仕上げるために、人物描写にも力を入れたんじゃないでしょうか。
最後にトリックですが、これもよかったです。ここから先はネタバレになりますので、未読の方は注意してください。
有栖川有栖は読者をうまいことミスリードしますね。足跡をつけた人物は靴の持ち主とは限らないという、ちょっと考えればわかりそうなことですが、折れた煙突にばかり意識をとられてしまい読んでる間、そのことに思い至りませんでした。
難点をあげれば乙川リュウが最後の方に犯した殺人未遂でしょうか。あれやっちゃうと同情できなくなりますね。