漫画、小説、映画などの感想

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46番目の密室 有栖川有栖 感想

10数年前に読んだのですが、内容をすっかり忘れていたので再読しました。有栖川有栖さんの著作はこの本のほかにも何冊か読んでおり、やる夫スレでも学生アリスシリーズを読んでいます。やる夫スレって何?って人も多いかと思いますが、詳しくはググってみてください。ネットが生んだ愛すべき文化だと思います。


この46番目の密室ですが、まずシュチュエーションがいいですね。日本のディクスン・カーと呼ばれる推理小説の巨匠の別荘に集まる小説家と編集者。それぞれの部屋への思わせぶりないたずら。夜のうちにおこなわれた二つの密室殺人。謎の暗号。被害者と容疑者たちとの間に、様々なトラブルがあったこともじょじょに明らかになっていき、誰が犯人だったとしてもおかしくないな、という気分にさせてくれます。


ここから先はネタバレになるので未読の方は注意してください。
いきなりですけど、トリックがよかったですね。煙突を重厚に凶器は弾丸として被害者の頭めがけてくらわせたわけですが、建物全体の構造を利用してそれをやっています。多くの推理小説は最初にトリックを考えて、それを扱うにふさわしい舞台を用意します。しかし、そのせいでトリックを成立させるため少々強引なシュチュエーションを用意する作品も多々あります。この作者の「女王国の城」なんかもそういうところが鼻についたりもしました。しかし、この46番目の密室はシュチュエーションが自然なので、読んでいて心地よかったです。
最後に犯人ですが、自分もアリスと同じく光司くんが犯人だと思っていました。物語の冒頭で火事の話が出たら、その関係者が犯人だと思うじゃないですか。作者がそれを狙ったのかはわかりませんが、物語の構成にミスリードされた感じですかね。

犯人の動機が少々とって付けたような印象を受けましたが、最初から最後まで楽しめたので、また近いうちに有栖川有栖の小説を読みたいと思っています。