るろうに剣心 北海道編2巻 感想
ジャンプでやってた頃のるろうに剣心が好きだったので、この北海道編も追いかけています。現在、単行本を揃えている数少ない漫画です。
読んでて感じるのは、和月伸宏ってすごくキレイでカッコイイ絵を描くんですけど、画面の情報量が多くてオレの2.58MBぐらいの脳みそでは整理しきれないんですよ。
コマ割りは基本断ち切りで、効果線とかフラッシュとかも多用するし、斜めに割るコマも多い。セリフのフォントも多種にわたる。画面が賑やかすぎて重要な情報が埋もれてしまうんですよね。
最近の多くの漫画はこんな感じだろってつっこまれそうですが、こういった画面作りって、勢いで読ませる漫画とは相性がいいけれど、るろ剣はちょっと違うような気がします。
作者は勢いで読むよりかは、じっくりと読んでほしいと思って描いている印象を受けるんですよ。かなり取材してると思うし、とんでも設定とか多いんですけど、少年漫画の中では作風にインテリジェンスを感じるほうですし。
弟子のいとうみきおが描いた「月曜日のライバル」って漫画に、和月伸宏の作画へのこだわりが強いことが描かれてますが、それが作風ということなんでしょうね。
内容についての感想ですが、左之助が合流してテンションが上がりました。斎藤も無事でよかった!やい!そこ!小並感とか言わない!
剣客兵器の源流が鎌倉時代の元寇に遡るってのはちょっとあれだなぁ…と感じました。国にピンチが訪れたときのために、己の強さを代々磨き続けてるわけでしょ?
「時の権力者の私兵と化すことを避ける」とか言ってるし、テロまがいのことをしてることから察するに、公的機関じゃないわけですよね?当然、国から補助金とか助成金とか出てないですよね?
なのになぜ数百年も私設の自衛隊みたいなことしてるんですかね?狂ったボランティアみたいな連中ですね。今後、組織の内部を掘り下げた描写が出てくるはずなので、説得力のある説明を期待したいところです。
和月伸宏の師匠の師匠にあたるにわのまことが描いた「THE MOMOTAROH」に室町時代の先祖の因縁で、その時代から続く黒武術を使う敵キャラがいたんですけど、こっからインスピレーション受けたのかな?とか思いました。というのも、ジャンプ連載時のるろ剣って「THE MOMOTAROH」からインスピレーションを受けたと思われる部分が結構あるんですよね。以上、邪推でした。
46番目の密室 有栖川有栖 感想
10数年前に読んだのですが、内容をすっかり忘れていたので再読しました。有栖川有栖さんの著作はこの本のほかにも何冊か読んでおり、やる夫スレでも学生アリスシリーズを読んでいます。やる夫スレって何?って人も多いかと思いますが、詳しくはググってみてください。ネットが生んだ愛すべき文化だと思います。
この46番目の密室ですが、まずシュチュエーションがいいですね。日本のディクスン・カーと呼ばれる推理小説の巨匠の別荘に集まる小説家と編集者。それぞれの部屋への思わせぶりないたずら。夜のうちにおこなわれた二つの密室殺人。謎の暗号。被害者と容疑者たちとの間に、様々なトラブルがあったこともじょじょに明らかになっていき、誰が犯人だったとしてもおかしくないな、という気分にさせてくれます。
ここから先はネタバレになるので未読の方は注意してください。
いきなりですけど、トリックがよかったですね。煙突を重厚に凶器は弾丸として被害者の頭めがけてくらわせたわけですが、建物全体の構造を利用してそれをやっています。多くの推理小説は最初にトリックを考えて、それを扱うにふさわしい舞台を用意します。しかし、そのせいでトリックを成立させるため少々強引なシュチュエーションを用意する作品も多々あります。この作者の「女王国の城」なんかもそういうところが鼻についたりもしました。しかし、この46番目の密室はシュチュエーションが自然なので、読んでいて心地よかったです。
最後に犯人ですが、自分もアリスと同じく光司くんが犯人だと思っていました。物語の冒頭で火事の話が出たら、その関係者が犯人だと思うじゃないですか。作者がそれを狙ったのかはわかりませんが、物語の構成にミスリードされた感じですかね。
犯人の動機が少々とって付けたような印象を受けましたが、最初から最後まで楽しめたので、また近いうちに有栖川有栖の小説を読みたいと思っています。
マスカレード・イブ 感想
東野圭吾さんの書くマスカレード・ホテルの主人公、新田と山岸が出会う前の前日譚にあたる短編集です。4つの短編の感想を簡単にしていきます。ネタバレありなので未読の方は注意してください。
それぞれの仮面
ヒロイン山岸がコルテシア大阪に短期赴任します。そこで元プロ野球選手のマネージャーとなった元彼と再開します。
4つのエピソードの中では一番地味な印象を受けましたね。元彼の宮原は善良で不倫なんかしなそうな人物ですから、お相手は元プロ野球選手の愛人なんだろうなと当たりを付け読み進める人は多いと思います。
ルーキー登場
ある会社経営者がジョギング中に殺害されます。事件の黒幕は料理教室の講師をしている被害者の妻で、自分に気のある男を利用し旦那を殺すよう仕向けるんですね。仕向けるだけで、殺人教唆の証拠もなく罪にとえない。釈然としない後味の悪さでした。しかも実行犯の男とは別に、被害者の妻には本命の男がいますから。悪女っぷりが印象的でした。
仮面と覆面
売れっ子女子高生作家はじつは中年男性だったという秘密を隠し通すエピソード。
コメディタッチで面白かったです。この本で一番好きな短編です。ホテルに訪れる人たちは仮面をつけている、という作品にそった秀作だと思います。
マスカレード・イブ
表題作だけあって、一番読み応えがあります。これまでのエピソードは新田と山岸のどりらかが主人公で、一方しか登場しませんが、こちらは二人とも登場します。
新田とコンビを組む、応援に駆り出された穂積理沙が印象的でした。緊張感がなく的外れなことばっかり言う残念なコですが、がんばって聞き込みをして、その姿に心を動かされた山岸から助言を得てお手柄をあげます。よかったよかった。
事件のトリックは交換殺人なんで、カンのいい人なら早い段階で気づくと思います。
全体的にこの短編集は、たぶんトリックよりも登場人物を書きたかったんじゃないですかね。そんな印象を受けました。
マスカレード・ホテルの感想はこちら
22年目の告白 感想
前半部分は観ていてキツイもんがありました。時効になった絞殺事件の犯人・曾根崎が事件についての本を出版。曾根崎のキャッチーなキャラクターが世間にウケて各メディアに引っ張りダコ。この展開は流石にないな、と思いました。
事件の加害者側の人間の本を出したがるアホな出版社はいくらでもありますけど、テレビ局は最近やけに保守的だし、仮に放送してもそれを受ける大衆側の拒絶反応がスゴいことになるハズなんですよね。劇中のような世間をにぎわす大フィーバーになるとしたら、日本の倫理観は終わりじゃないですか。いくらフィクションとはいえ、どんだけ的外れに世間を描いているのかと思いました。はっきり言って前半部分は茶番もいいところです。
本を出版し、メディアにも露出したことにより、心に闇を持つ一部の人間からネット内でカリスマ的な支持を集める、ぐらいの描写でよかったのではないでしょうか。この程度の描写でも作劇できたハズです。
ここから先はネタバレになりますので、未見の方は注意してください。
真犯人と思われる黒マスクの男が登場し、曾根崎の正体がわかったあたりからは多少は面白くなってきました。結局、黒マスクも犯人ではありませんでしたが、そこから曽根崎が真犯人のジャーナリスト・仙堂に辿りつきます。
前半は22年前の事件で先輩を失った刑事・牧村が主人公っぽかったですが、後半は曾根崎が主人公っぽかったですね。
仙堂は仲村トオルが演じていますが、正義漢っぽいイメージがある俳優なのでサイコな役はミスキャットのように感じました。
犯人の動機ですが、ここだけよかった。推理ものは犯人の動機が、どうしても後付けになってしまいがちですが、なぜ大切な人の目の前で絞殺するのか、という点がうまいこと理由づけされていたと思います。同じ体験をした人間がこの世にいるのが救い。だから自分で生み出すためというサイコパスっぷり。
ここがよかっただけに曾根崎が真犯人の牧村にたどり着くまでの描写を丁寧に描いてほしかったですね。
前半は犯人の自己顕示欲を刺激し向こうからのアプローチを待つ、後半は仙堂の所作と言動に怪しさを感じた曾根崎が殺害方法から核心にたどり着く、ここのディティールをもっとうまいこと描けていたらよかったと思うんですよね。
タワーリングインフェルノ 感想
パニック映画の傑作ということで観てみましたが、ちょっとテンポが悪いというか退屈でしたね。1974年の古い映画です。上映時間が2時間半と長く、途中で飽きてしまいました。
火災がおきるまで30分以上あるのですが、その間に描かれる人々の群像劇もあまり興味を惹かれませんでした。上映時間が長いパニック映画といいますと、タイタニックを思い出します。まぁパニック映画ではなく恋愛映画という方がしっくりくる人のほうが多いとは思いますが…
あれももう20年前になるんですね…月日の流れどうなってんの。
このタワーインフェルノ、当時としては洋画の最高ヒット作だったようですが、そういうところもタイタニックを思い出しますね。
映像的にはスゴいと思います。CGなんてない時代の映画ですから、本物の火を使うしかないわけで、いまの映画より真に迫るものがあります。
たとえば怪獣とか未来都市なんかは、現代社会にないものですから特撮よりCGのほうがすぐれた映像を作れますけど、火は普通にあるもんですからね。
リアリティ?いやいやリアルそのものだから、みたいな感じですか。
黒澤映画なんかも本物の弓を使って、いまの映画よりよっぽどスゴい映像を作っているわけで、古いからダメな映像ってことはないですよね。